|
|
|
|
「極大地震時における表層地盤の強い非線形現象とその影響に関する研究委員会」 |
|
|
|
|
|
■趣旨: |
|
地盤工学会では東日本大震災の後に震災研究委員会として4つの研究委員会が立ち上がった。その中の一つに「地盤変状メカニズム委員会」がある。この委員会は東日本大震災で見られた様々な地盤変状(液状化、盛土崩壊、斜面崩壊など)について土質試験、模型実験及び数値解析によってメカニズムの解明および対策について検討してきた。またその研究委員会の中で開催された「地盤材料の構成モデルワークショップ」では、従来からの一次元対応のひずみ非線形による解析から、弾塑性理論に基づく土の構成式を用いた多次元解析まで、幅広く検討され、浦安地区で見られた液状化現象に関する様々の数値解析を通じて、地震時の地盤の非線形応答を正しく考慮する重要性があらためて認識された。
さて、関東地方の海岸域は沖積層に埋立て地盤が載った軟弱地盤である。首都圏直下型地震に対して緊急の対策はもちろん、南海トラフ地震などの長周期震動による、地盤の液状化、建物の被災、地震による地盤の沈下・変形などが懸念されている。さらに、従来までは地震中に構造物が安全であればいい、という概念であったが、今では本震後、複数の余震なども含め、地震発生から数日タームでの安全性評価が必要となってきている。さらに粘土地盤の変状などは、地震後数年タームの現象であることも知られてきた。したがって、微小ひずみ領域のみならず大ひずみ領域を含めた地盤の液状化、変形を正確に記述することが必要であり、加えて地震後の地盤変状を、きわめて長期の時間軸に対して、正確に予想する技術も必要となる。
一方、地震工学からの問題提起として、岩手・宮城内陸地震で観測された一関西の加速度履歴がある。これは地表面のUD観測波で最大加速度として上方向4000Galが観測され、また地下260mの観測点で最大水平加速度が1000Gal以上観測された。アスペリティーによる震源モデルでは、このように大きな地中観測最大水平加速度を説明することが難しく、また、従来までの比較的簡易な一次元対応の地盤の非線形解析では、地表面での上下加速度を説明することも難しい。表層地盤の非線形性の影響が強いと指摘されてはいるものの、すべてを合理的に説明できるまでには、まだ至っていない。弾塑性理論による非線形解析へ大きな期待が寄せられている所以である。
関東地方はJGS関東支部の書籍「関東の地盤」に見られるように多くのボーリングデータがあり、関東地区の表層地盤の地震応答の研究を開始するためのデータは多く存在する。本研究委員会は先の研究委員会の成果を取り入れながら、土の弾塑性力学など、地盤の強非線形性も考慮しうる数値解析モデルも駆使して、レベル2など極大地震の地盤挙動について検討することを目的とする。 |
|
■活動期間 |
|
平成27年4月〜平成30年年3月(予定) |
|
■活動概要 |
|
1)液状化まで含めた表層地盤の非線形性を考慮しうる解析モデルによる、工学基盤における入力地震動の推定方法に関する研究
KiK-netなど観測網が広く設置され、観測地震波は多く入手できる状態にあるものの、地震動が大きくなるほど表層地盤の非線形性の影響が地中の観測波に現れてくるとの指摘は地盤工学のエンジニアのみならず、地震工学者によっても古くから言われてきている。工学基盤からの真の入力波についての評価はまだ十分ではないといわざるを得ない。弾塑性力学によって表層地盤の非線形性を考慮した工学基盤の入力波について検討する。
2)地盤不整形が地表に及ぼす影響に関する研究
阪神淡路大震災で見られた震災の帯のように、地盤不整形性は、表面波も生み出しながら、地表面におおきな影響を及ぼすことはよく知られている。また、表層地盤を剥ぎ取った工学基盤や解放基盤ではどこを基盤面にするかなど地下構造の推定が重要となる。せん断波速度は地盤のばらつき、地盤の状態(飽和か不飽和か)、N値との関係などによって変わることが知られており、工学基盤や解放基盤といわれるVs値の影響など不明な部分も多い。地盤工学だけでなく、地震工学、地質学の最新の知見を合わせてディスカッションし、共通の認識を持つことが重要となる。本研究委員会では地質調査、土質試験の専門家とともに非線形解析への入力物性について検討する。
3)東京沿岸域の地震動特性と沿岸構造物の耐震性評価に関する研究
上記1)、2)の成果をもとに、東京沿岸域の極大地震時の地震動評価と既設構造物の耐震性評価についての検討を行う。比較的地盤情報が多い浦安地区を最初の対象とする。細粒分の多い地盤の液状化メカニズム、地盤改良の効果、極大地震時の挙動等を検討する。加えて他の地域の地盤データ収集を行い、東京湾近辺の耐震性評価まで展開する。
研究成果はJGS関東支部発表会をはじめ、委員会期間中でも随時成果報告会を開催する予定である。
|